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2016年度の模擬国連について(1)

2017.5.30

一般的に知られている模擬国連の中でも“より議論が深められる”日本語によるMUNK会議(2017年2月11日)と、“国際社会に通用する素養を培う” 原則英語使用のMUNK International会議(2017年3月19日)が、本学園ホールで開催された。これらの会議には、中等部からの参加生徒数も倍増し、他校の生徒も合わせて、MUNK205名、MUNK International95名が参加し過去最多となった。
2016年度の議題は「Nuclear Weapons(核兵器)」である。
今回はなぜ“核兵器”をテーマに取り上げたのか、実行委員幹部に尋ねてみることにした。
すると“核兵器問題は、遠くで扱われているようでいて、実は身近に存在しているものであるのと、核開発においては、平和的利用という策もある、ということを同世代の中高生の皆によく知ってもらいたかったから”、との答えが返ってきた。更に、連日ニュースで報道されている核問題に対して、自分たちならどのように考えて解決策を見出すのか、意識も高めているという。
この“核兵器”という議題に対しては、「核兵器の禁止、拡散防止、核実験、安全保障」と、あえて焦点をしぼらせず、多角的な視点でグローバルおよびローカルな問題をとらえさせ、担当国として、どのような視点でとらえていくかを先に生徒自身に整理させた。
更に「安全保障」に関しても、「核の傘」「保有国との利害関係」「核による抑止力」も考えなければならなかった。

当日は、開会式後、各国の立場表明に引き続き、ロビー活動で意見の近い国同士がグループをつくり、決議案を作成していった。大使は、国益を考えながら、自国の主張をするだけではなく、他国の意見に耳を傾け、交渉にあたる。議論が進むにつれ、より大きな視野で調整が図られ、国際社会全体にとって有益な決議案が作成されていく。MUNK会議午後のセッションでは、提出された3つの決議案についての活発な議論が行われた。最終的に核兵器削減を目的とする機関の設立やNPT(核拡散防止条約)の強化を促す決議案が可決された一方、核保有国を中心に提案された核保有の枠組みについては否決された。今回のロビー活動では、“核兵器”に対する各国のスタンスが明確だった分、国際秩序における解決案に“平和と安全の捉え方が違う相手には何としても譲れない”との大使たちの強固な姿勢に特徴が見られ、交渉が難航した。カリブ海に浮かぶ人口約18万の島国Saint Luciaの大使(本校中等部3年)は、力強く粘り強いアプローチを繰り返した。このSaint Luciaがサポートしていたのは、非核地帯条約に批准している多くの国を率いるメインサブミッターの「南アフリカ」(本校高等部2年)で、数分以内に発射できる核兵器を削減。ただ総体的に減らしても完全になくすのではなく、地球規模の紛争に備え、保有はしておくスタンスだった。
又、核兵器に反対の立場の総合的な国連機関を作り、その傘下で、平和的利用目的で用いられている核の軍事使用を防ぎ、協定に基づき研究成果と技術の共有を図る。更に第三者機関も発足し、世界中の核保有状況について情報を統合し、核サミットを毎年開催するというものだ。結果、この決議案は多くの支持を得て可決された。この決議案には、ナイジェリア大使(九州福岡のリンデンホールスクール中高等部)も役割分担において賢明な状況判断をし、力を発揮するに至った。

一方、「ロシア」率いる核保有国の主張は、「正当な防衛のための軍事開発を認める。」「核実験は必ず地下で行うが、それに反した場合は国連機関によって軍の強制縮小をさせる。」「過激派を撲滅する。」というものであり、そのために世界の核の力を一議会に集中させる新たな枠組みを作り、戦力制裁を可能にして治安を維持する効力を発揮する議会として「核兵器国際取締議会」を提案するも、否決された。